公募研究
以前の研究により、マボヤ後期神経胚において、尾をつくる初期段階として胴部と尾部の境界が、はじめて目に見えるかたちで「くびれ」として形成され、この「くびれ」が形成される直前に、その後「くびれ」の凹みに相当する位置に、表皮細胞が2~4列に秩序正しく並び、個々の細胞は、背腹軸に沿って伸びた長方形をしていることを発見した。本年度はまず、「くびれ」形成前後の胚を一定時間間隔で固定し、phalloidin染色により細胞の境界を可視化し、「くびれ」形成過程で、個々の表皮細胞がどのように形を変化させ、周りとの位置関係を変えていくかを共焦点顕微鏡を用いて3次元的に観察した。その結果、「くびれ」を形成している表皮細胞は、apico-basal軸に沿ったクサビ形はとらず、上皮細胞シートに凹みを作る原動力として良く知られるapical constrictionは起きていないことが予想された。これは、リン酸化ミオシン抗体による染色において、くびれを構成する表皮細胞のapical部に活性化ミオシンの蓄積が見られなかったことからも支持される。そのかわり、細胞列を構成する長方形の細胞は、apico-basal軸に沿って伸長しており、細胞列を作る以前の時期およびその後のくびれが形成された時期では、伸長が見られないことがわかった。すなわち、くびれ形成前に表皮細胞はapico-basal軸に沿って伸長し、その伸長を戻す力でapical部を引きずりこみ、くぼみを形成しているのではないかと予想された。さらに、「くびれ」形成の過程をより詳細に観察するために、PH-YFPを強制発現させることで胚の細胞境界を可視化し、生きた胚によるライブイメージングを試みた。現在までにマボヤ胚におけるライブイメージングの条件設定を何度も行い、この技術により詳細な解析が可能であることが見出された。
3: やや遅れている
ライブイメージングの条件設定に時間がかかりすぎたため、計画したような詳細な解析が進められなかった。
年度の終わりに、ライブイメージングで既に高度の技術を持つCDBの林研を、生きたマボヤ胚を持ち込んで技術取得のため訪問した。そのおかげで、ライブイメージング自体については今後良い条件で進められ、問題点が出てきた際には随時相談・訪問することで解決できると期待される。今後は、ミオシンの可視化や様々な実験処理をした胚についてもライブで観察し、詳細に変化を観察していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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