これまでの研究により、マボヤ後期神経胚において、尾をつくる初期段階として胴部と尾部の境界が、はじめて目に見えるかたちで「くびれ」として形成され、この「くびれ」が形成される直前に、その後「くびれ」の凹みに相当する位置に、表皮細胞が2~4列に秩序正しく並び、個々の細胞は、背腹軸に沿って伸びた長方形をしていることを発見した。本年度は、「くびれ」形成の前後にわたって個々の表皮細胞がどのような振る舞いをすることで、最終的に「くびれ」が形成されるのかを理解するために、PH-YFP を強制発現させることで胚の細胞境界を可視化し、生きた胚を使ったライブイメージングを行った。その結果、1)長方形型の細胞が観察された後、表皮細胞は分裂し、この分裂に伴って「くびれ」が形成されること、2)分裂は胚前方部では胚の周囲に沿って、後方部では前後軸に沿って起こり、分裂方向に前後軸に沿った明快な境界があること、3)この分裂を阻害すると「くびれ」ができないことが明らかになった。これらのことから、分裂方向の違いが「くびれ」形成に大きく関与するというモデルを示唆するに至った。また、前後軸に沿った分裂方向の境界は、表皮細胞の系譜の前後の境界とは、細胞1列分ずれていることがわかった。現在は、分裂方向を乱した時に「くびれ」の形成が起きるかどうか、分裂方向の違いがどのように制御されているかどうか、という2つの問題に取り組んでいる。
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