研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
23111517
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松井 貴輝 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (60403333)
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キーワード | FGF / 正のフィードバック / 数理モデル / 発生生物学 |
研究概要 |
生物の器官が正常に形成されるには、複数の細胞が集合し、正確な位置に配置されることが必須である。細胞が集まるためには、個々の細胞が持つ"動く"という性質が正の効果を持つ。しかし細胞移動は、隣接細胞との間に、シグナル、張力、圧力の変化などのノイズを引き起こすので、細胞を正しく配置することに対しては、負の効果があると考えられる。したがって器官形成には、ノイズに柔軟に対応し、秩序正しく細胞を空間配置する高次システムが必要であると考えられる。本研究では、発生生物学と数理モデルを組み合わせた融合研究を行なうことで、このシステムの解明をめざす。特に、個々の細胞の動きが細胞集団全体の動き、形、機能にどのような影響を与えるのかに着目する。 ゼブラフィッシュにおいて、クッパー小胞(KV)は左右非対称性を規定するために重要な器官である。この形成には、細胞の集団形成、集団移動、上皮化、空間構造の構築など様々な生命現象が含まれる。本研究では、KV形成を器官形成のモデル系として、どのように正常な器官が形成されるのか、特に、細胞の動きに着目して解析する。我々は、発生生物学的手法を用いて、FGFシグナルがKV前駆細胞の集団形成を制御すること発見した。さらにその過程で、個々のKV前駆細胞が集団移動とは異なる挙動を示すことを見いだし、移動パラメーターの抽出を開始している。また、KV前駆細胞のクラスター形成に関する数理モデルの構築を行い、新たなフィードバックループの存在が不可欠となる可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生生物学手法を用いた研究で、KV前駆細胞の集団形成の分子機構の解明に成功し、この研究をベースに数理モデルの作製も順調に進んでいるから。
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今後の研究の推進方策 |
数理モデルの予測から、新たなフィードバックの存在が示唆されたことから、細胞の接着に関するパラメータも収集する必要が出てきている。よって、今後は、細胞の移動だけでなく、接着性の制御に対する解析を含めることで、細胞が集団移動するしくみと器官形成の関係性を明らかにしていく。
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