本研究では肺組織内での細胞の動き・ゆらぎと細胞間相互作用の形成による炎症巣の場の決定メカニズムを解明することを目的として、独自に開発したマウス肺内in vivo live imagingシステムを用いて解析を行い、今年度に以下の結果を得た。 1)マウス肺内in vivo live imagingシステムを用いた樹状細胞の抗原分子取り込み過程の動的挙動解析:抗原分子が肺組織内に取り込まれ、そこで炎症が誘導されるためには、まず抗原分子が樹状細胞などの抗原提示細胞に取り込まれてプロセシングを受ける必要がある。そこでGFP陽性の樹状細胞を移入し、抗原吸入後に樹状細胞が抗原を取り込む過程をビデオ撮影して、抗原取り込み過程の動的挙動解析を行った。 2)抗原提示細胞とTh細胞の細胞間相互作用のダイナミクス解析:はじめに傾向標識したOVA抗原を吸入させ、樹状細胞による取り込み過程の時空間的解析を行った。その結果、樹状細胞は抗原吸入20分後には抗原分子の取り込みを開始することが明らかとなった。その後抗原を取り込んだ樹状細胞と肺に集積してきた抗原特異的Th2細胞の細胞間相互作用や細胞集団形成における役割を解析した。 3)マウス肺内in vivo live imagingシステムによる喘息肺でのリンパ球の動的挙動解析:抗原特異的な種々のTh細胞分画について喘息肺での浸潤様式の差異を解析したところ、Th1、Th17細胞などは肺組織内でTh2細胞のような明瞭な細胞集団を形成しにくいことが明らかとなった。さらにTh1やTh2細胞について抗原吸入後の肺組織内での動的挙動解析を行って差異を検討した。また喘息抑制効果のあるステロイド剤を投与するとTh2細胞の肺への流入数が減少することが明らかとなった。
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