研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
23111522
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福井 宣規 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60243961)
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キーワード | 細胞運動 / 遺伝子改変マウス / シグナル伝達 / 低分子量Gタンパク質 |
研究概要 |
細胞運動は、膜の極性化と細胞骨格のダイナミクスを必要とする最も基本的な細胞機能の1つであり、2次元での解析結果から、RacやRho、脂質キナーゼやホスファターゼといったシグナル分子の時空間制御の重要性が指摘されてきた。しかしながら近年、3次元での細胞運動に特異的に必要とされるシグナル分子が同定されるに至り、新たなパラダイムの構築が急務となっている。DOCK8はヒト免疫不全症の責任分子であることから近年注目を集めている分子である。研究代表者は、DOCK8の生理的機能の解明に向けて、ノックアウトマウスを作製し、以下の成果を得た。 1. 野生型マウスおよびDOCK8 KOマウスの骨髄細胞からGM-CSFを用いて樹状細胞を準備し、所属リンパ節へのホーミングを解析した結果、DOCK8が樹状細胞の所属リンパ節へのホーミングに重要な役割を演じることを明らかにした。 2. 野生型マウスの耳介より単離した皮膚組織に、野生型およびDOCK8欠損樹状細胞を取り込ませ、皮下組織内での運動性やリンパ管への侵入を比較解析した結果、DOCK8を欠損した樹状細胞は、リンパ管に正常に侵入できるものの、真皮組織における運動性が顕著に低下していることを見いだした。 3. コラーゲンゲルを用いた3次元培養を行ったところ、DOCK8欠損樹状細胞では、運動性が障害されていた。一方、2次元環境下では、野生型樹状細胞とDOCK8欠損樹状細胞の間で遊走能に差を認めなかった。このことから、DOCK8は3次元環境下での樹状細胞の運動を選択的に制御していることが示唆された。 4. DOCK8はCdc42に特異的に結合し、そのGTP-GDP交換反応を触媒することを生化学的アプローチにより明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
DOCK8が3次元環境下での樹状細胞の運動を選択的に制御していることを明らかにする等(Blood2012)、当初の予想を上回るスピードで研究が進展したから。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進行しており、多くの成果が得られている。次年度は最終年度であるため、この成果をできるだけ早くまとめて論文発表を行うと共に、特に重要な成果に関しては、HPやマスメディア等を利用して広く国民に発信し、説明責任を果たしたい。
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