動物の体の形作りにおいて原腸形成は発生初期に起きる重要な形態形成運動である。この運動により、中胚葉が外胚葉と内胚葉の間に入りこみ、脊椎動物の基本的な体制である3胚葉構造を作る。アフリカツメガエル胚の原腸形成では、背側中胚葉の細胞が、収斂伸長という細胞運動を起こすことにより組織が伸長する。この細胞運動には、細胞間の接着の制御が重要である。本研究では、細胞接着分子カドヘリンファミリーの一つ、PAPCの細胞内局在の制御機構を解析した。これまでPAPCタンパク質がGSK3βによりリン酸化され、それが局在制御に重要であることを明らかにした。GSK3βによるリン酸化がユビキチン化の引き金となることはβカテニンをはじめいくつかのタンパク質で知られている。そこで、PAPCのユビキチン化を調べるため、mycタグしたユビキチンとGSTタグしたPAPCを共発現させてプルダウンを行うことにより、PAPCのユビキチン化がアフリカツメガエル胚において起こっていることを明らかにした。 ユビキチン化されたPAPCの局在を調べるため、蛍光タンパク標識したユビキチンをPAPCと発現させると、PAPCとユビキチンは細胞内小胞で共局在するが、細胞膜のPAPCは共局在しなかった。この結果からユビキチン化がPAPCの局在制御に重要であることが示唆された。 PAPCのポリユビキチン化がPAPCの局在に影響を及ぼすかどうかを検討するため、ポリユビキチン鎖を形成できない変異ユビキチン遺伝子を発現させた。その結果、PAPCの細胞膜への局在が阻害された。さらに変異ユビキチンタンパク質を発現させた胚では、細胞間接着が阻害され、収斂伸長運動が異常になることが観察された。これらのことから、PAPCによるリン酸化とユビキチン化による制御が、原腸形成における組織の細胞運動に必須の役割を果たしていることが明らかとなった。
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