本研究では、ゼブラフィッシュの初期神経系(神経管)が構築される過程で起こる集団的細胞運動における非筋型ミオシンの実体と意義を明らかにするため、細胞生物学的解析と光学顕微鏡を活用した定量解析を行った。
収斂運動における細胞と、前年度までに見出した細胞-細胞外基質間におけるアクトミオシンの動態について解析を行った。単細胞レベルでの移植実験とスピンディスク共焦点顕微鏡を組み合わせたイメージング解析から、正中線に向かう収斂運動は一定ではなく、60-70秒の周期性を有することが明らかになった。この周期性は細胞―基質間で見られる周期的なアクトミオシンの動態と似ていることから、2者の間には時空間的・機能的関連性が示唆された。また興味深いことに周期的な収斂運動は近接する細胞間で同調しており、細胞間相互作用を介した調節機構の存在が示唆された。以上の結果から、神経管を形成する細胞の運動は細胞のそれまでの挙動と近接する細胞の挙動の周期性の2要素により、ある程度予測できるようになったと言える。今後は検証を重ね得られたデータから統計学的手法を用いて細胞の挙動を詳しく記述し予測性の向上を目指す必要がある。
また周期的なミオシン動態の意義を明らかにする目的で、N-cadherinとVangl2のノックダウン実験を行った結果、上で述べたミオシン集積の周期性が損なわれた。2遺伝子は神経管形成に必須の遺伝子でありこれらの機能がミオシン動態を介したものである可能性がある。ミオシン集積が個々の細胞に与える影響についてはレーザー焼灼法とCALIで、ミオシン集積の分子機構については低分子量G蛋白質RhoファミリーとCa2+経路の機能解析とin vivo FRET解析により明らかにする予定であったが、条件検討を行う段階に留まったため次年度以降の課題としたい。
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