研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
23111534
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
米村 重信 独立行政法人理化学研究所, 電子顕微鏡解析室, 室長 (60192811)
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キーワード | 上皮シート / 損傷修復 / 死細胞 / アクトミオシンリング / タイトジャンクション / アドヘレンスジャンクション |
研究概要 |
上皮細胞シート中の細胞が殺傷され、その領域を修復する時に死細胞の周囲にアクトミオシンのリングが形成され、その収縮がアドヘレンスジャンクション(AJ)を介して死細胞周囲の細胞に伝達することにより修復運動が効率よく起こり、修復終了時にすばやくリングは消失する。これらの機構を明らかにするために以下の実験を行い、成果を得た。 1:多くの細胞種について修復過程を比較した。これにより、極性が発達し、タイトジャンクションを形成する上皮細胞でリングの収縮による修復が起こることがわかった。 2:タイトジャンクションタンパクであるクローディンGFPを使ったライブイメージングにより、リングによる修復は、タイトジャンクションを速やかに延長させるため、細胞死による上皮シートのバリア機能の低下の時間が最小限に留まると言う利点があると考えられた。 3:細胞の死の認識機構に、細胞から放出されるスフィンゴシンン1リン酸が関わると言う報告がなされたので、スフィンゴシン1リン酸合成の阻害剤を投与する実験を追試したが、報告と同様の結果は得られず、その物質の関与はかなり限定的であると考えられた。また、死細胞の断片を上皮シートにふりかけるだけで、アクトミオシンの集積が誘導されるという実験も同一の細胞株を使って追試したが、再現できず、あまり信頼できない結果であると考えられた。 4:リングの収縮力を伝えるAJでは、アクチン繊維とαカテニンが結合していると考えられるが、動的なAJの形成崩壊があることを考えると、その結合にも調節がなされていると考えられるので、αカテニン分子の欠損変異体をいくつか形成し、その調節に必要な領域と調節の意味を明らかにしようとした。αカテニンの中央部分を欠くと、細胞内でαカテニンはアクチン繊維と結合したまま離れなくなり、AJの形成崩壊のターンオーバ「が大きく阻害されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクトミオシンリング形成の条件はかなりよくわかってきた。また、その収縮力を隣接する細胞に伝える分子機構も理解の基礎ができつつある。ただし、死を認識するシグナル機構については、実験的に明らかにすることが困難な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
死を認識する機構については、世界的にも確実なものがない状況なので、一旦これ以上時間は注がないことにする。むしろアクトミオシンリングの消失に繋がる機構、生を認識する機構の方が実験もしやすいので、こちらに力を注ぐ。また、αカテニンとアクチン繊維との結合の調節についてはさらに生化学実験等によって理解を進める。
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