小脳皮質におけるプルキンエ細胞の規則正しい配列が、どのような機構によって成し遂げられるのかについて、細胞の「動き」を「移動の場」の特徴と関連付けながら明らかにする事を目的とした。これにあたって、スライス培養標本から得られる断片的な知見ではなく、神経管の丸ごと培養や、発生期胎児を個体のまま観察する系を確立する事により、巨視的にも複雑に形態を変化させる小脳の中で起こる個別の細胞の動きを追跡する事を目指した。 経時的観察には2フォトン顕微鏡を用い、in vivoイメージングでは母体を吸入麻酔下で維持しながら、in utero 状態にある胎児を水浸レンズで観察が出来るようなチャンバーを作製した。輸液の補給と体温の維持によって、子宮壁越しに胎児脳内の神経前駆細胞の動きが約24時間に渡って観察が可能となった。また、胎児神経管の丸ごと培養では、コラーゲンゲル内で三次元培養を行い、約300ミクロン厚の組織内にある小脳神経細胞の経時的な細胞移動を1ミクロン毎、30分間隔で2日間に渡って観察する事が出来た。これらの系を用い、細胞の標識方法と移動場の改変方法を工夫する事によって、プルキンエ細胞と顆粒細胞や小脳核細胞などとの相互作用について検討を行った。
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