研究領域 | 分子ナノシステムの創発化学 |
研究課題/領域番号 |
23111703
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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キーワード | 非平面性ポルフィリン / 水素結合 / 超分子構造 / 金属錯体 / 光誘起電子移動 |
研究概要 |
1.周辺部にカルボキシル基を導入した、新規ドデカフェニルポルフィリン(DPP)誘導体及びそのジプロトン化体を合成し、その結晶化に伴う超分子構造をX線結晶構造解析により検証した。その結果、導入したカルボキシル基の数と位置によって、形成されるカルポキシル基間の水素結合を含む超分子構造に顕著な違いが見られた。特に、4つのメソフェニル基のパラ位にカルポキシル基を導入したジプロトン化DPP誘導体では、カルポキシル基間の相補的水素結合により、ポルフィリンナノチャンネル構造の顕著な安定化が観測され、ポルフィリンナノチャンネルを基盤とする今後の光機能開発に新たな可能性を拓いた。一方、そのポルフィリンナノチャンネルに、電子供与体であるテトラチアフルバレン(TTF)を包接した複合超分子を合成し、その結晶構造を明らかにした。その結晶を用いて色素増感太陽電池を作成し、その光電変換効率を求めたところ、合計8つのカルボキシル基を導入したDPP誘導体とTTFとで構成された超分子において、最大22%のIPCE値を示した。2.1つのメソフェニル基に金属配位部位として1,10-フェナンスロリン(phen)を導入した、新規DPP誘導体を合成した。さらに、そのphen部位にルテニウム錯体を配位させ、Ru(II)-サドル型ポルフィリン複合分子を合成し、そのキャラクタリゼーションを行った。 3.テトラフェニルポルフィリン(TPP)の1つのメソフェニル基に、複素環補酵素であるフラビンを導入した、新規TPP-フラビン複合体を合成した。そのフラビン部位にRu(II)錯体を配位させ、Ru(II)-フラビンーポルフィリン複合体を合成し、そのキャラクタリゼーションを行った。さらに、その錯体のポルフィリン部位を可視光により励起し、フェムト秒過渡吸収スペクトル測定を測定した。その結果、ポルフィリンからRu(II)-フラビン部位へのエネルギー移動を経由して、Ru(III)-フラビンラジカルアニオン錯体が生成することを見いだした。この電子移動状態の寿命は、10ns程度であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成を計画していた分子のうち、数種類の分子の合成に成功した。また、それらの分子の結晶構造解析、分光学的及び電気化学的キャラクタリゼーションを行い、その性質を明らかにすることができた。また、電子供与体を包接した新規なポルフィリンナノチャンネル構造を構築し、その結晶構造を明らかにした。さらに、固体状態でのフェムト秒過渡吸収スペクトル測定により、その光電子移動ダイナミクスに関する知見を得た
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに目的化合物の合成とキャラクタリゼーションを行うと共に、それらの分子の光化学反応における反応挙動や光ダイナミクスについて検討を行う。それらの知見に基づいて、光触媒作用等の複合超分子としての新規な光機能性の開発を行っていく予定である。
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