研究概要 |
生体の内部を自由に動くナノマシンとして,自然界において同様の機能をする鞭毛に着想を得た.鞭毛の形状を模倣することで液中を泳動させるロボットは従来より研究されており,現在は数十μmの体長のマイクロロボットの作製が報告されている.本研究においては,細胞の内部を対象とするために,体長数μmのロボットを作製する必要がある.まず,フォトリソグラフィ技術によりマイクロ構造体を作成し,これを泳動させることを試みた.次に,構造体のさらなる微小化のため,カーボンナノコイル(CNC)を用いた.化学気相成長法(CVD)により作製されるCNCは,線径200nm×コイル径500nm×コイルピッチ300nmの螺旋形状をしたカーボンナノ構造体である.CNCは螺旋形状のため,自身を回転運動させることで推進力を発生させることが可能であることを磁場制御により実験的に確認した.磁場は電磁コイルによって発生させることを考え,顕微鏡上に3軸の対向したコイルを設置した.シミュレーションにより5mTの回転磁場を発生させることを確認し,理論的にナノマシンを回転させ推進させることを確認している.ナノマシンを細胞内に導入させる方法に用いるのは,生化学分野で研究が進められているリポフェクション法である.これは脂質膜を細胞に接合させることで,接合部で膜融合をおこさせる方法である.マイクロビーズを細胞に導入させる基礎実験を行い,直径1μmのマイクロビーズを細胞の内部に導入させることに成功した.電子線による細胞膜のナノ加工にも成功した.今後はナノマシンの細胞内導入を行っていく.
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