研究実績の概要 |
分子集合カプセルの究極の機能化の1つは、薬物送達システムへの展開であり、「望みのタイミングで薬物(包接ゲスト分子)を放出させる」ことである。本研究では、水素結合性分子集合カプセルに光応答部位を付与し、光刺激によって、分子集合カプセルの解離-再形成(開閉)、および、それに連動するゲスト分子の放出-再包接の制御を目的としている。 カリックス[4]レゾルシンアレーン1は、水飽和のCDCl3中で水8分子を介して水素結合に基づく分子集合6量体カプセルを形成する。我々は、光応答部位としてデンドロン-アゾベンゼン側鎖Rを有するtrans-ホスト2, 3, 4, 5, 6を合成し、それらがゲスト包接分子集合6量体カプセルGuest@[(trans-Host)6(H2O)8]を形成すること、そして、側鎖Rの光異性化に基づくカプセル形成能とゲスト包接能の相関は側鎖Rの性質に大きく依存することを見出した。 カプセル濃度 = 1 mM, ゲストに3当量の(C6H13)4NBrを用いた場合、trans-ホスト2, 4のゲスト包接カプセルは、350 nm光照射で側鎖Rが定常状態で各々69%, 58% cis-体に異性化しても、包接率は全く低下せずカプセルの解離は起こらなかった。一方、trans-3, 5, 6のゲスト包接カプセルは、側鎖Rが定常状態で各々66%, 81%, 73% cis-体に異性化すると、包接率は各々1%, 36%, 27%に低下することがわかった。また、450 nm光照射または50度C加熱によりtrans-体に再異性化させるとカプセル再形成が起こり、包接率は初期状態に回復することがわかった。
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