本課題では、相補的な塩橋を用いたインターロック化合物や二重らせん分子の構造や集合状態を制御し、その動的な性質をうまく利用することで動的機能を創発し、環境の変化に動的に応答しうるソフト材料や触媒を開発することを目的として研究を行った。本年度は、主に以下の3つの項目に関して重要な結果が得られた。 1.相補的なアミジニウムーカルボキシレート塩橋からなる二重らせん分子形成に及ぼす構造因子の解明:m-ターフェニル骨格からなる剛直な分子鎖をもつアミジンの2量体もとに分子設計を行い、様々な置換基や官能基をもつアミジン2量体を合成し、相補的なカルボン酸2量体との二重らせん形成に関する種々の熱力学的パラメータの測定を行った。その結果、二重らせんの安定性はリンカー部位とアミジン上の置換基の構造に大きく影響されることが明らかになった。 2.相補的なアミジニウムーカルボキシレート塩橋からなる二重らせんポリマー上でのキラル伝播:m-ターフェニル骨格からなる剛直な分子鎖をもち、キラルなアミジンとアキラルなアミジンユニットからなる共重合体と相補的な構造をもつカルボン酸ポリマーを混合して二重らせんポリマーを形成させ、らせんの巻き方向の偏りを詳細に検討した。その結果、らせんの巻き方向の偏りがキラルなアミジンユニットの割合よりも大きくなる現象、すなわち二重らせん上での不斉増幅が起こっていることが明らかになった。 3.アミジンとカルボキシル基を併せもつマクロサイクルの動的構造制御:アミジンとカルボキシル基を併せもつマクロサイクルは有機溶媒中では、分子内で相補的なアミジニウムーカルボキシレート塩橋を形成し、8の字型の構造をとっているが、酸や塩基を加えることで可逆的に塩橋の解離・再結合を行うことができることを示した。また、この動的な構造変換は蛍光の大きな変化を伴うことが明らかになった。
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