カーボン系ナノマテリアルであるカーボンナノチューブ(CNT)と半導体ナノ粒子を組み合わせた複合材料の作製を、CNTを特異的に認識するペプチド(アプタマー)を遺伝子的に付加した球殻状タンパク質(mDps)を用いることで行った。まず遺伝子操作した球殻状タンパク質の内部空間でCo3O4のナノ粒子(NP)合成を行い、この球殻状タンパク質とCNTを水溶液中で超音波撹拌することで、CNT周囲にタンパク質殻厚(約1.5nm)だけ離れたCo3O4ナノ粒子を多数修飾したバイオ分子+CNT複合体(CNT+mDps:NP)を作製に成功した。さらに、この(CNT+mDps:NP)溶液を数十~百nmの間隔を持つ電極間に滴下して配置した。この配置方法では、溶液の緩衝薬剤成分を除去することで良好な濃厚(CNT+mDps:N)配置が可能となった。また電極間に交流電界を印可することによりCNTが電極間方向に並行化する実験結果を得ることにも成功した。この(CNT+mDps:N)群の電気特性計測を行った結果2つの特徴的な電気特性を得た。一つは、NPを量子井戸とするクーロンブロッケード特性であり、予測されるものであった。もう一点は、電極間に配置された(CNT+mDps:NP)群において電圧の印可により電流経路が限定されて一経路だけが選択され、その結果選ばれた単一のナノ粒子よるRe-RAMと同様のメモリ効果と思われる特性が生じるものであった。このRe-RAM様特性は、電極間に配置されたCNTやNPの多数群の中から、自動的に一個量子NP選択がおおなわれることを示しており、複雑なナノ構造作製を行うことなく単一量子NP選択が実現できることが示されたと言える。
|