研究概要 |
O_2濃度1%に設定した低酸素インキュベーター内で各種MM細胞株を培養し、自律的に増殖を続けるHA-MM細胞株の作成を試み、AMO-1、OPM-2、IM-9細胞株からそれぞれHA株の作製に成功した。それぞれの細胞増殖を解析したところ、低酸素環境では細胞増殖スピードはそれぞれHA株で有意に遅く、またdoubling timeは親株vsHA株で、AMO-1、OPM-2、IM-9それぞれ23.9±2.5日vs39.2±2.7日、24.5±1.9日vs31.2±3.3日、16.3±0.4日vs21.9±1.5日と有意にHA株で長かった。またこれらHA株をNormoxia(20%)に戻し培養を行うと、Normoxia下の培養細胞と増殖速度に復した。次にKi67/7-AADを用いた二重染色による細胞周期解析を行った。7-AADの蛍光強度が2nに存在するG0/G1分画のうち、Ki67陰性分画であるG0期(Takeuchi M,et al.Cell Death Difer,2010.)の細胞集団は、親株vsHA株でAMO-1、OPM-2、IM-9それぞれ4.0±2.2%vs9.4±4.9%(p<0.05)、3.9±1.4%vs5.22±2.9%(p<0.05)、3.0±1.0%vs8.6±3.0%(p<0.005)と有意にHA株で長かった。これらのうち、AMO-1親株(Normoxia)とHA株を用いて正所性MM担癌モデルマウスを用いて生存期間の検討を行ったところ、HA株で有意に生存期間の短縮を認めた。 これらのことからMM-HA株は、いわゆるがん幹細胞としての性質を有することが示唆された。 HA株細胞におけるCD138高原の発現をFCMで確認したが、CD138の発現低下(Matsui W,et al。Cancer Res, 2008.)は認めなかった。またHA株におけるWnt/β-catenin/TCFシグナルの亢進の有無を、TCF-binding site/eGFP遺伝子の導入、およびウエスタンブロッティングで検討したが、亢進はみられなかった。
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