研究代表者は、受容体型チロシンホスファターゼVE-PTPが血管内皮細胞に特異的に発現し、血流により生じる力学的な刺激であるシェアストレス(SS)により、VE-PTPの局在が制御されると共に、SSによる血管内皮細胞の多様な機能制御に関与する可能性を見出している。本研究では、VE-PTPの生理機能とその作用機構の解析を行うことにより、腫瘍血管新生の新たな制御メカニズムを明らかにすると共に、VE-PTPを利用した新規のがん治療法の開発を目的とした。 前年度に引き続き、VE-PTPがSSにより、血管内皮細胞の下流に移動・局在する機構につき解析を行い、低分子量G蛋白質であるRacやRabの関与が示唆された。また、細胞外領域が、SSによるVE-PTPの細胞内移動に重要であることを見出した。VE-PTPノックダウンの系を確立し、VE-PTPがSSの下流に局在する分子のチロシンリン酸化レベルを制御する可能性を見出した。VE-PTP-floxマウスを作製し血管内皮細胞特異的にCre-ERT2リコンビナーゼを発現するマウスとの交配をすすめていたが、得られた後者のマウスではタモキシフェン誘導によるCreの発現が上手く機能しないため、この実験に関しては新たに別のCre-ERT2リコンビナーゼを発現するマウスを入手し研究を進めることとした。
|