ADAMTS1(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs1)はがんの悪液質に関連する遺伝子としてクローニングされた細胞外マトリックス(ECM) 分解酵素である。我々は全長ADAMTS1とプロテアーゼドメインを欠失したADAMTS1(delta-ADAMTS1)の二つのコンストラクトを作成した。 Tube formationアッセイでは二つのコンストラクト共に有意に血管新生を阻害した。さらに二つのコンストラクトは共にHUVECの増殖を阻害した。一方、平滑筋細胞や線維芽細胞に対しては阻害効果を認めなかった。同様にフローサイトメトリーによる解析でAnnexin-V陽性細胞数はHUVECで有意に増加していたが、他の細胞では認めなかった。担がんマウスを用いた遺伝子導入治療において、二つのADAMTS1はいずれも抗腫瘍増大効果を発揮した。腫瘍内血管数は有意に減少しており、ADAMTS1治療群では腫瘍内の血管に活性型caspaseのシグナルを認めた。以上より、ADAMTS1はプロテアーゼドメイン非依存的に血管内細胞にアポトーシスを起こし、腫瘍の成長を抑制することが明らかとなった。 さらに、アデノウイルスに全長ADAMTS1を組み込み、アデノウイルス治療によるリンパ管内皮細胞(HMVEC-dLy)への効果を検討した。VEGFC刺激したHMVEC-dLyはVEGF-R3のリン酸化を起こすが、アデノADAMTS1はリン酸化を抑制した。またアデノウイルスによりADAMTS1を導入したMDA-MB231乳がん細胞株はコントロールと比べてHMVEC-dLyの遊走を抑制した。 ADAMTS1は血管新生・リンパ管新生をそれぞれのメカニズムにより阻害することを明らかにした。
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