研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
23112512
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
近藤 亨 愛媛大学, プロテオ医学研究センター, 教授 (30270573)
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キーワード | 癌幹細胞 / グリオーマ / 老化 / ニッチ / 分泌因子 |
研究概要 |
腫瘍形成における老化誘導因子Ecrg4の機能について解析をすすめ、以下の研究成果を得た。 1、悪性グリオーマの周辺に存在するEcrg4陽性細胞を同定するために、免疫染色法を用いて検討を進めているが同定に至っていない。これらEcrg4陽性細胞の機能を検討するために、野生型およびEcrg4ノックアウトマウス脳にマウス人工グリオーマ幹細胞株(GIC)を移植し、腫瘍形成能の違いについて検討したが、両マウス間で優位な差はなかった。次いで、Ecrg4+/+、+/-、-/-マウス脳から調整した神経幹細胞(NSC)を形質転換し、作製したGIC株の性状を解析した結果、Ecrg4-/-NSC由来GICは他の細胞から樹立したGICに比べ増殖が早く、ヌードマウスおよび野生型マウス脳への移植により早期にグリオーマを形成した。Ecrg4+/+と+/-NSC由来GICによる野生型マウス脳での腫瘍形成能が著しく弱いことから、これらGICで発現しているEcrg4が免疫系細胞等に何らかの機能を有していると考えられる。また、本結果はEcrg4が腫瘍抑制因子として働いていることを明確に証明した。 2、Ecrg4受容体を同定するために、成熟型Ecrg4とヒトIgGのFc領域の融合タンパク質(Ecrg4-Fc)発現ベクターを構築し、Ecrg4-Fcがよく結合する細胞を同定、その細胞から調整したmRNAからcDNAライブラリーを作製した。作製したcDNAライブラリーを組み込んだレトロウイルスをEcrg4-Fcの結合が見られなかった細胞に感染させ、Ecrg4-Fcとの結合による発現ライブラリースクリーニングを行っている。Ecrg4-Fcが結合する細胞群の濃縮に成功し、現在組み込まれた遺伝子の同定を進めている。 3、GICから分泌される老化誘導因子を同定するための実験系を構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究成果から(1)腫瘍周辺部に存在するEcrg4陽性細胞を同定していないが、Ecrg4が癌抑制因子として機能することを証明すると共に、免疫細胞への働きについての新規知見に繋がる結果を得ている、(2)発現スクリーニング法を用いてEcrg4受容体遺伝子が濃縮されており、その同定が間近である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた研究成果を基盤として、以下の研究を推進していく予定である。 1、腫瘍周辺部に存在するEcrg4陽性細胞の同定 2、免疫細胞に働くEcrg4の機能解析 3、Ecrg4受容体の同定とそのシグナル伝達系の解析 4、GICによる細胞老化誘導実験系の構築と老化誘導因子の同定
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