公募研究
血管新生は、固形腫瘍増殖や組織損傷時の修復過程に必須であり、その制御は、血管内皮細胞の増殖促進と抑制のバランス制御で成立している。私どもは、これまでに血管内皮細胞の増殖促進(VEGF シグナル)と抑制(Notch シグナル)のバランスを制御する分子を探索し、ZNF50(BAZF)を同定した。BAZFはVEGFシグナル下で誘導され、Notchシグナル下流分子CBF1に結合し、これを分解に導くことでNotchシグナルを遮断することを突き止めている。さらに、CBF1分解の本体としてユビキチン E3 リガーゼAngE3(Cullin3)を同定し、BAZF-Cullin3複合体が、CBF1特異的なユビキチンリガーゼとして機能することを明らかにしてきた。本年度は、BAZFおよびCullin3の機能解析をさらに押し進めるために、以下の3項目につき研究を進めた。その現状とその成果は以下の通りである。(1)BAZF-/-マウスへの腫瘍移植による血管新生誘導:乳ガン細胞4T1細胞移植下での腫瘍形成および血管新生形成を解析した結果、有為な血管新生抑制および腫瘍増殖低下を観察した。(2)血管内皮特異的GFP発現マウス(Flk-GFP)との掛け合わせによるBAZF-/-Flk-GFPマウスでの腫瘍血管新生動態のインビボイメージング:BAZF-/-Flk-GFPマウスを作製し、乳ガン細胞4T1細胞移植下での血管新生のインビボイメージングを継続して行っている。(3)Cullin3のE3リガーゼ特異性複合体のバリエーション解析ならびに基質探索:Cullin3のN-末端ドメインに結合するタンパク質を免疫沈降および質量分析により解析し、2つの候補タンパク質を同定した。さらに、新たな基質の探索を継続して行っている。当初計画のAngE3(Cullin3)コンディショナルノックアウトマウスの作成は進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初計画のAngE3(Cullin3)コンディショナルノックアウトマウスの作成は、遅れているもののBAZF-/-マウスへの腫瘍移植による血管新生誘導解析、BAZF-/-Flk-GFPマウスと血管新生のインビボイメージング、ならびにCullin3の基質探索は順調に進んでいる。また、2年目の計画の一部が前倒しで進んでいる事から、全体として概ね順調に進んでいると判断している。
今後の計画も、予定通り推進する。また、BAZFによる血管新生制御シグナルの解析は、計画を超えて推進する予定である。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Blood
巻: 119 ページ: 2688-98
http://bloodjournal.hematologylibrary.org/content/119/11/2688.full.pdf+html
http://www.m.ehime-u.ac.jp/data/course/list_detail.php?id=201100000053