公募研究
我々は炎症性サイトカインや活性化マクロファージが血管新生の誘導に重要な役割を果たしていることを報告している。さらにがん発症や進展においてマクロファージの炎症応答に新たに注目して研究を進めた。がんの炎症応答としてがん血管新生の誘導メカニズムを明らかにしながら新規がん血管新生抑制の創薬研究を開始させたいと考えた。そこで本年度の研究で以下のことを明らかにした。1. これまで我々はN-myc downstream regulated gene-1(NDRG1)ががんの悪性化に重要な因子であることを報告しており、このNDRG1のマクロファージを含む間質細胞における役割を評価するためNDRG1ノックアウトマウスを使用した。この同腹子のノックアウトマウスと野生型マウスにB16/BL6細胞とLLC/3LL細胞を移植したところ腫瘍の増殖がノックアウトマウスで有意に抑制されることを見出した。さらにノックアウトマウスより単離したマクロファージで野生型と比較して血管・リンパ管新生因子の発現が有意に抑制されていることが。2. IL-1の発現が亢進している高転移性ヒト肺癌細胞株のマウス皮下移植モデルにおいてIL-1 receptor antagonistを投薬すると腫瘍の増大や血管・リンパ管新生、腫瘍内へのマクロファージの浸潤数、リンパ節への転移の減少がみられ、さらに腫瘍内のがん間質細胞における血管・リンパ管新生関連因子の発現が減少した。3. 天然由来化合物であるオクタヒドロナフタレン誘導体が血管内皮細胞のVEGFRの膜への発現を抑制し、マウス角膜法によるVEGF-A誘導の血管新生やB16/BL6メラノーマ細胞誘導の血管新生を抑制し、腫瘍の増大を抑制することを観察した。
2: おおむね順調に進展している
現在NDRG1ノックアウトマウスを用いてがん間質応答におけるNDRG1の重要性についての検討をおこなっている。このNDRG1はがん間質における血管新生やマクロファージの性質において重要な役割を担っていることが示唆されたため今後この詳しいメカニズムの解明を行い、治療標的となり得るか否かについて検討を行いたい。
今後はがん間質におけるNDRG1の発現によりどのようにがんの増大に寄与しているかの詳細なメカニズムの解明を行い、新しい治療標的となり得るか否かについて検討を行っていく。またNDRG1以外の腫瘍関連マクロファージやがんの間質応答を制御する因子の探索を引き続き行う。さらにはマクロファージ標的薬剤としてリポソーム化製剤の粒径による腫瘍への取り込みの違いなどの研究を行っていく。同時にNDRG1や新しい標的分子のヒトがん患者における病理解析を行い、ヒトがん患者においてこれらの因子が標的分子やバイオマーカーとなり得るか否かについて検討を行う。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (7件)
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