研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
23112521
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀人 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 教授 (90240514)
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キーワード | プロテオグリカン / 細胞外マトリックス / バーシカン / がん / ノックアウトマウス / 微小環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、細胞外マトリックスのダイナミズムを司るバーシカン(Vbrsican、以下Vcan)によるがん細胞挙動制御機構を明らかにすることである。本研究では、Vcanコンディショナルノックアウト(cKO)マウスと種々の発がんマウスモデルやがん移植実験を組み合わせた実験を行い、Vcanのがん細胞制御機構の解明を目指している。 平成23年度は、発がんモデルマウス系とVcan<flox/flox>マウス系との交配による実験群の樹立をめざす一方、Cre酵素発現アデノウイルスを用いたVcan cKOマウス実験系を確立し、がん移植実験を行った。 C57B1/6マウスに生着する線維肉腫細胞株をCre酵素発現アデノウイルスと共にVcan<flox/flox>マウスの皮下に移植したところ、線維肉腫単独移植と比較して腫瘍塊は増大し、組織学的に腫瘍塊は顕著な中心壊死と血管の増生を伴っていた。このことは線維芽細胞の合成・分泌するVcanが腫瘍増殖に対して抑制的に機能することを示している。Vcanは、(1)N-末端のG1ドメインによるヒアルロン酸高次構造形成を介したシグナル制御、(2)コンドロイチン硫酸の生理活性分子結合活性に基づくシグナル制御、(3)C-末端G3ドメインと他のECM分子の複合体による成長因子の貯留と分配、という3つの作用点を持つ。現在、腫瘍増殖巣にVcanのG1ドメインあるいはG3ドメインを腫瘍局所に注射し、あるいはアデノウイルス発現系を用いて局所に過剰発現させ、腫瘍増殖抑制の責任ドメインの同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発がんモデルマウスの購入・獲得、交配による実験群の確保に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
発がんモデルマウスの発がん頻度が予想以上に低いことが明らかとなったため、Cre酵素発現アデノウイルスを用いたVcanコンディショナルノックアウトマウスの腫瘍移植実験に切り替えた。移植実験は順調に進展しており、一定の成果が挙がると期待している。
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