研究概要 |
癌の治療成績を改善させるために、治療抵抗性の原因の一つである腫瘍内低酸素領域の局在を明瞭に可視化する技術の開発は重要である。 本研究では、分子イメージング技術の重要なモダリティである核医学検査とMRI検査を中心に、主要な低酸素領域の局在を明瞭化するための検討を行った。 まず、低酸素領域に親和性を示す複数の分子プローブの作成を試みた。1)汎用性の高い核種である ^<99m>Tcで標識した化合物。低酸素細胞内で還元反応が亢進していることを利用して、低酸素細胞内にのみ、^<99m>Tc含有化合物が停滞するような分子プローブの設計を進めた。その結果、ニトロベンジルエステル構造と ^<99m>Tcキレート構造とを有した化合物 ^<99m>Tc標識SD32が低酸素細胞内に停滞することを確認した。2)低酸素領域分布することが知られているピモニダゾールのメチル基を ^<18>Fで置換したPETプローブ^<18>F-FPINIを合成し、その体内動態をPPIS-4800で観察した。^<18>F-FPINIが^<18>F-FMISOよりも良好な血中クリアランスを示すことが示され、^<18>F-FPINIが新たな低酸素PETプローブとなり得ることを確認した。3)細胞膜透過性ドメイン(PTD),HIFの酸素依存的分解ドメイン(ODD),ハロタグリガンドと特異的に結合する蛋白質ハロタグの複合たんぱく質からなる ^<111>In標識SPECTプローブを合成し、FM3A担癌マウスに投与し、SPECT/CT撮像を行い、低酸素領域と思われる部位に腫瘍内に不均一に集積することを確認した。MRIとの重ね合わせ画像では、組織間コントラストがさらに良好となるため、腫瘍内低酸素領域の組織学的な特徴が示される可能性があることが分かった。
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