研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
23112702
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教 (00587793)
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キーワード | 低分子RNA / 遺伝子 / 病理学 / シグナル伝達 / 癌 |
研究概要 |
本研究では、マイクロRNA(miRNA)などの低分子RNAプログラムの晶質管理機構の分子基盤を明らかにし、その機構の悪性腫瘍およびウイルス感染における役割を解析し、病態把握への応用の可能性を検討することを目的とする。平成23年度では、RNAiレポーターシステムを用いてmiRNA経路修飾因子/条件のスクリーニングを行い、MCPIP1と呼ばれる遺伝子をmiRNAによるRNAサイレンシングの負の調節因子として同定した。miRNA経路に与える影響を検討し、MCPIP1が細胞質でribonucleaseとしてmiRNA前駆体のループ部分を切断しmiRNAの生合成を終息させること、MCPIP1がmiRNAの生合成における中心的なribonucleaseであるDicerと拮抗すること、MCPIP1がmiR-155-c-Maf-IL4シグナル経路を調節することなどを見出し、これまで未知であったmiRNA産生を負に調節する経路を新たに発見した(Molecular Cell,44,424-436)。癌ではしばしばmiRNA生合成機構の異常がみられ、我々もこれまでに代表的な癌抑制遺伝子であるp53がmiRNA生合成を制御することを見出してきた。肺癌の遺伝子発現データを解析した結果、DicerとMCPIP1が拮抗する関係にあることも見出した。また、悪性リンパ腫におけるmiRNAの役割について解析を行い、NPM-ALK陽性の悪性リンパ腫(未分化大細胞型リンパ腫(ALCL))でmiRNA-135bの発現が非常に高く、特に、miRNA-135bがヘルパーT細胞の1種であるTh2細胞の分化に重要なGATA3、STAT6を抑制することで、リンパ腫細胞をTh17細胞様に擬態させて、癌細胞の免疫形質および癌微小環境を調節するというユニークな機能を見出した(Blood,118,6881-6892)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、現在までに当初の予定にそって順調に研究を進めることができており、また、想定以上の結果を得ることに成功している。これまでに、これらの結果を報告し(Molecular Cell,44,424-436、Blood,118,6881-6892)、MCPIP1の発見に関しては、Molecular Cell同号のPreview "Another" Loophole "in miRNA Processlng" で取り上げられ、また、科学新聞、日経産業新聞など複数のメディアでも取り上げられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、これまでの研究結果をもとに、MCPIP1の機能解析、miRNAの悪性腫瘍における役割について、研究計画にそって研究課題を推進する予定である。また、加えて、新しいin silicoの技術を取り入れた解析を積極的に取り入れていく予定である。
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