研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
23112704
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富岡 征大 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (40466800)
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キーワード | 選択的スプライシング / インスリン / 感覚神経 / 細胞運命決定 / 記憶・学習 / 神経可塑性 / 遺伝学 / イメージング |
研究概要 |
mRNA前駆体の選択的スプライシングは、分子機能及び生命現象に多様性を与える重要な機構である。線虫のインスリン受容体ホモログdaf-2は、選択的なカセットエキソン(エキソンX)の挿入により2種類のアイソフォームが作られる。これらの中で、エキソンXを含むアイソフォームのみ、塩濃度を学習し記憶する行動を制御できる。従って、エキソンXの挿入はdaf-2、及びdaf-2が働く神経細胞に神経可塑性に必要な機能を付加させるために必要な機構であるといえる。daf-2のスプライシングレポーターを発現させた線虫を用いた解析から、エキソンXの挿入は組織特異的に起こることが分かっていた。本研究では、様々な細胞でdaf-2スプライシングレポーターを発現させた複数の株を用いて、daf-2エキソンXの挿入が起こる細胞を同定した。その結果、化学物質受容性の感覚神経ではdaf-2エキソンXの挿入が特に顕著に起こることが分かった。更に、mRNAタギング法を用いた解析から内在性のdaf-2mRNAでも同様の細胞特異的な選択的スプライシングが起こることを確認した。daf-2の組織特異的な選択的スプライシングを制御する分子の探索を行った結果、種を超えて保存された3種類のスプライシング制御因子が関わることが明らかになった。これらの分子は、哺乳類において脳特異的な選択的スプライシングに関わる分子である。以上の結果から、線虫の神経の多様性を作る機構の一端は、種を超えて保存された組織特異的な選択的スプライシングが担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した今年度の2つの大きな計画(daf-2 mRNA前駆体のスプライシングパターンの詳細な観察、及びdaf-2選択的スプライシングに関わる制御因子の同定)における解析を殆ど終えることができ、その中で、いくつかの重要な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した計画に従い研究を実施する。それに加えて、本年度の研究において確立した内在性のdaf-2 mRNAの選択的スプライシングを調べる解析も行う予定である。また、本年度の研究で明らかになったdaf-2の選択的スプライシングを制御する分子群の発現、及び機能細胞の解析も進める予定である。
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