研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
23112706
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片岡 直行 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (60346062)
|
キーワード | スプライシング / RNA病 / 低分子化合物 / レポーター |
研究概要 |
高等真核生物には、遺伝子発現の多様性を生む機構として選択的スプライシングが存在します。選択的スプライシングに破綻をきたした場合、疾患として現れる例が多く知られています。本研究では、スプライシング異常によって引き起こされる「RNA病」の疾患メカニズムの解析と、異常スプライシングを是正する治療薬の探索を目的とします。具体的には、筋ジストロフィーや家族性自律神経失調症(Familial Dysautonomia)のスプライシング異常メカニズムを解析します。 平成23年度は、以下の実験を行いました。 1)筋ジストロフィー原因遺伝子Dystrophinにみられる異常スプライシング機構の解明 DMD型の患者には、イントロン内の変異により、イントロン内に偽エクソンが生じるケースも報告されています。このような患者の場合、偽エクソンの包含のみを阻害してやれば、正しいDystrophinm RNAを作ることができ、DMDの完治が期待できます。申請者は、神戸学院大学の松尾雅文教授との共同研究から、第27または67イントロン内に変異を持ち、その変異によって生じた偽エクソンにより、Dystrophinの読み枠がずれた患者を見出しています。これらの患者の偽エクソンとその周辺領域の配列を用いてレポーターを作製し、同様の偽エクソンの包含がみられることを確認しました。 2)家族性自律神経失調症原因遺伝子IKBKAPの異常スプライシング機構の解明 家族性自律神経失調症(FD)は、自律神経や感覚神経に障害を持つ、常染色体劣性先天性疾患です。FD患者の99.5%において、IKBI笛P遺伝子のイントロン20内の一塩基置換がみられます。この変異により、第20エクソンをとばすようになります。この異常スプライシング機構を解析するため、健常人またはFD患者のIKB鮎P遺伝子の一部を組み込んだレポータープラスミドを作製し、培養細胞に導入してFD患者での異常スプライシングを反映していることを確認しました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬剤候補を探索する目的で、筋ジストロフィー患者遺伝子および家族性自律神経失調症のレポータープラスミドを構築しました。また同時に、試験管内でスプライシングを解析できる系を構築することができました。これらの系は、最終的な薬剤スクリーニングおよび異常スプライシング分子機構解明のためには欠かせないものであり、スプライシング分子機構、治療薬候補の探索および薬剤作用機構の解明に向けて順調に進んでいると考えます。
|
今後の研究の推進方策 |
作製したレポーターを安定に発現する培養細胞株を樹立し、ケミカルライブラリーのスクリーニングに用いる予定です。ライブラリーはFDA認可化合物や東京大学や京都大学が所有する化合物を用い、候補化合物の早期同定を目指します。また、レポーターとRNA結合タンパク質のライブラリーを用いて、トランス因子を同定します。試験管内スプライシング反応系は、トランス因子やシス配列の作用の検定だけではなく、スプライシングのどの過程に影響があるかを調べるのに非常に強力な系です。今後この系と、培養細胞から調整した核抽出液を用いて分子機構の解明を目指します。
|