研究実績の概要 |
高等真核生物には、遺伝子発現の多様性を生む機構として選択的スプライシングが存在します。選択的スプライシングに破綻をきたした場合、疾患として現れる例が多く知られています。本研究では、スプライシング異常によって引き起こされる「RNA病」の疾患メカニズムの解析と、異常スプライシングを是正する治療薬の探索を目的とします。具体的には、筋ジストロフィーや家族性自律神経失調症(Familial Dysautonomia)のスプライシング異常メカニズムを解析します。 平成24年度は、以下の実験を行いました。 家族性自律神経失調症原因遺伝子IKBKAPの異常スプライシング機構の解明 家族性自律神経失調症(FD)は、自律神経や感覚神経に障害を持つ、常染色体劣性先天性疾患です。FD患者の99.5%において、IKBKAP遺伝子のイントロン20内の一塩基置換がみられます。この変異により、第20エクソンをとばすようになりますが、特に神経系においてその傾向が顕著に見られます。しかしながらどのような機構でこの異常スプライシングが起こっているかは明らかではありませんでした。そこでこの機構を解析するため、健常人またはFD患者のIKBKAP遺伝子の一部を組み込んだレポータープラスミドを作製し、培養細胞に導入してFD患者での異常スプライシングを反映していることを確認しました。また、このレポーターを用いて、FDにおいて第20エクソンをスキップさせるのに必要な配列を探索し、第20イントロン内の5'端近傍の配列を同定しました。またレポーターとともに様々なRNA結合タンパク質のcDNAを導入し、RBM24,RBM38というRNA結合タンパク質が異常スプライシングを是正する活性を持つことを見出しました。
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