平成23年度までにNANOS2に直接結合するタンパク質としてDND1を同定した。平成24年度においては、まず、Dnd1遺伝子領域を含む約160kbpのBACを利用してDND1のC末端にFLAGタグを付与した融合たんぱく質を発現するトランスジェニックマウスを作製した。このトランスジェニックマウスの生殖層抽出液から抗FLAG抗体を用いてDND1-FLAGを免疫沈降により回収し、共沈殿したmRNAをRT-PCRによって解析した。その結果、NANOS2結合mRNAがDND1と共沈殿することが明らかになり、DND1結合RNAはNANOS2結合RNAをふくむことが明らかになった。次に、両者の結合の整理的意義を解析するために、Dnd1条件付きノックアウトマウスと、Oct4deltaPEエンハンサーの下流でCreERT2を発現するトランスジェニックマウスを作製した。そして、両者を交配した上でタモキシフェンを投与し、胎児期のオス生殖細胞特異的にDnd1をノックアウトした。その結果、生殖細胞は1)細胞周期を停止せずに分裂を続け、2)減数分裂特異的遺伝子の発現が上昇し、さらに、3)アポトーシスを起こした。以上のことから、Dnd1の胎児期オス生殖細胞における欠損は、Nanos2遺伝子の欠損と極めて類似した表現型を示すことが明らかとなった。このことは、NANOS2とDND1は胎児期のオス生殖細胞において複合体を形成することによって機能することを強く示唆している。
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