公募研究
細胞を構成する生体高分子を正確に合成することは生命の維持に必須であり、これを可能にする「品質管理システム」の存在が近年明らかとなってきた。mRNAについては、成熟化過程で生じうる異常mRNAを排除するために、未成熟終止コドンを持つmRNAを排除するNMDや、リボゾームがmRNA上で停滞した際にこれを排除するNGDなどの品質管理機構が存在する。しかし、一部のタンパク質では翻訳が一時停止することで、その発現や局在が制御される例が知られている。酵母のHAC1u mRNAは通常翻訳停止状態でポリソーム上にあり、見かけ上、上記NGDの基質としての性質を持つ。一方、HAC1u mRNAは、約700 ntという酵母にしては異常に長い3'-UTR を持ち、NMDの基質となり得る。しかし我々は、HAC1uがこの何れのmRNA品質管理機構からもすり抜けていることを明らかにしてきた。本年度は、その品質管理回避が、HAC1u mRNAの翻訳停止状態と係わっている可能性を念頭に、HAC1u mRNAの翻訳が、通常の条件、即ち、小胞体ストレスのない条件下でも起こる突然変異の取得を介して、その分子機構の解明を目指した。HAC1u自身の機能と切り離してこの現象を解析するため、HAC1u同様に翻訳停止と小胞体ストレス依存の翻訳再開のおこる、HAC1-HIS3-HAC1レポーターを構築した。この融合遺伝子は軽度の小胞体ストレス存在下でのみhis3遺伝的背景を持つ野生株のHis-表現型を相補した。そこで、小胞体ストレスのない通常条件下でもHis+となるHac1u expression変異(hue変異)を多数単離し、これらが5つの相補性群に分類されることを明らかにした。このうち、hue5の原因遺伝子の同定を試みており、PAU17、SSA2、POM33のいずれかの遺伝子に変異が落ちていることが示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nucleic Acids Research
巻: 41 ページ: 3901-3914
doi: 10.1093/nar/gkt010
生化学
巻: 85 ページ: 89-91
Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine
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