公募研究
本研究では、プラナリア体性幹細胞である新生細胞の持つ分化全能性の分子機構としてmRNA制御機構に着目し、候補mRNAの同定、その全能性制御における機能の理解を目的としている。具体的には、新生細胞の細胞質に特異的に観察されるRNP顆粒であるクロマトイド小体状に局在するmRNAを同定し、その被制御機構と全能性への関与を明らかにする。候補mRNAを同定するために、1)クロマトイド小体を構成するRNA結合タンパク質の免疫沈降法による同定、2)平行して構成RNA結合タンパク質の機能阻害個体の第2世代シーケーンサーによる網羅的発現解析をつうじて得られた候補遺伝子に関し、クロマトイド小体での局在の確認とRNAiによる機能阻害実験をおこなう予定である。これまでに、プラナリア(Dugesia japonica)の新生細胞クロマトイド小体を認識する、ショウジョウバエのRNA結合タンパク質、Me31bの相同遺伝子Djcbc-1のタンパク質を認識する抗CBC-1抗体が得られていた。本年度、別種のプラナリアで報告された抗Y12抗体がD.japonicaにおいてもクロマトイド小体を認識すること明らかにした。抗Y12抗体を用いた2重抗体染色によって、新たにpiwiファミリーに属するRNA結合タンパク質、DjPiwiCを認識する抗体がクロマトイド小体を認識することを明らかにした。さらにこれらの抗体を用いた多重染色の結果、これまで単一と思われてきたクロマトイド小体がヘテロな集団であることを突き止めた。クロマトイド小体上に局在するmRNAを同定するために、クロマトイド小体の形成に関与するDjago2および上記のDjcbc-1のRNAi個体において454シークエンサーを用いた大規模シークエンスをおこなった。この過程で、より高精度のRNAの回収法を考案することができた。現在、23万以上のシークエンスデータを解析中である。
2: おおむね順調に進展している
クロマトイド小体に局在、または構成するRNA結合タンパク質のRNAiによる機能阻害個体からの高純度のmRNAを精製することに成功し、第2世代シークエンサー、(ロッシュ454シークエンサー)によるレーンx2をおこない、予定以上のリード数を得ることができた。さらに免疫沈降をおこなうために必要な複数のクロマトイド小体構成盟A結合タンパク質を認識する抗体を同定することができた。免疫沈降に関しては当該年度実施する予定であったが、抗体の同定は免疫沈降をより簡便かつ、比較生物学的におこなうために重要な情報であったといえる。
今後の推進方策として、得られたシークエンス情報をいかに生かして研究計画をたてるかにある。そのひとつとして、抗PiwiC、Y12、およびOBC-1抗体をもちいた免疫沈降によって得られたmRNA分画に対し、第2世代シークエンスするとともに、RNAi個体からのシークエンス情報から同定した候補遺伝子のプライマーをもちいたPCR法による絞り込みを同時におこなうことで、精度の高い絞り込みをおこなう。その後のRNAi実験等に関しては計画通りおこなう。
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