本研究では、ALSの病態と深く関連する二つのRNA結合蛋白質TDP-43とFUSそれぞれが持つRNA制御機能全体と、連携して果たす機能についての分子基盤情報を構築し、ALS病態の統合的解明へ役立てることを目的として研究を開始した。昨年度までに両タンパク質に結合するRNAを網羅的に同定するためのPAR-CLIP法の樹立を目指し、cDNAライブラリー作製のための様々な条件検討を行った。その後、本年度は、3回のdeep sequenceを行い、研究室内でその後の情報解析ができる体制を構築してきた。その結果、RNaseの濃度やRNA断片長などさらに条件を変更する必要があることが判明し、ライブラリー作製を繰り返した。最終的には、TDP-43やFUS両方のライブラリーにて、予想される結合モチーフが検出されるなど、PAR-CLIP法によるライブラリー構築から情報解析までを研究室内で一貫してできる体制が樹立できた。現在、TDP-43とFUSそれぞれが、どのようなRNAのどのような部位に結合しているのか、詳細な情報解析を進めている。更には、TDP-43とFUSに共通する遺伝子の絞り込みを行っている。また、ALSで同定されている遺伝子変異の入ったTDP-43についても、PAR-CLIP法でdeep sequenceし、変異型TDP-43が野生型と比較してどのようにターゲット認識に差異があるのかも解析中である。
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