研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
23112713
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片平 じゅん 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (30263312)
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キーワード | mRNA / ポリアデニレーション / 核-細胞質間輸送 / 転写 |
研究概要 |
新たに転写されたmRNAを鋳型として、効率よくタンパク質を翻訳する機構は、様々な刺激に応答して活性化された遺伝子を速やかに、かつ、適切なタイミングで機能させるためとりわけ重要であり、細胞の最も基本的な機能の一つである増殖をはじめ、ストレス応答、さらには、多細胞生物における細胞分化といった、より高次の生命機能発現を含めて、すべての生命活動の基盤となる。外界からの種々の刺激に応答して発現した"新生mRNA"の時空間的に制御された遺伝子発現のためには、様々な機能を持ったタンパク質のmRNAへの結合のタイミング、mRNAに結合した各タンパク質の協調的な働きによる各素過程の共役が必要である。転写-核外輸送(TRanscription-Export=TREX)複合体は、真核生物種間で保存されたタンパク質複合体で、出芽酵母では、mRNAの転写、プロセシング、核外輸送の連携において重要な役割を果たすことが示されている。一方、多細胞生物のTREX複合体の機能は十分に解析されていない。本年度は、ポリアデニレーション因子、転写終結因子、エンドヌクレアーゼなど、ヒトTREX複合体と同複合体に相互作用する新規タンパク質因子が、どのように遺伝子発現において協調的に機能しているのかを明らかにすることを目的とし、TREX複合体の構成因子やTREX複合体結合タンパク因子の発現をRNA干渉を用いて抑制し、遺伝子発現がどのような変化を受けるかをクロマチン免疫沈降法、in situハイブリダイゼーションなどの方法を用いて解析した。その結果、転写伸長、転写終結、mRNAの遺伝子座からの解離と核外輸送の連携の分子機構の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写終結因子群がTREX複合体の機能に重要であることを見出すなど、ヒト細胞では明らかでなかったTREX複合体の作用機序のいくつかを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は熱ショック遺伝子以外の遺伝子発現におけるヒトTREX複合体の役割を解明していくために、ゲノムワイドな解析を行なっていく必要がある。そのため、次世代シークエンサーを用いたChIP-シークエンス等の方法をさらに導入していく必要がある。
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