研究領域 | 多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム |
研究課題/領域番号 |
23112715
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
平山 隆志 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (10228819)
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キーワード | RNA安定性制御 / polyA除去酵素 / polyA付加酵素 / ミトコンドリア / シロイヌナズナ / 出芽酵母 |
研究概要 |
シロイヌナズナのミトコンドリアのmRNA安定制御に関わると考えられるpolyA特異的RNA分解酵素AHG2/PARNとpolyA付加酵素AGS1の機能解明を進めている。当該年度は、主に以下の2点について成果を得た。 1)これら因子のミトコンドリア局在 これまで、プロトプラストを用いた一過的発現系でのタンパク質の細胞内局在を調査してきたが、これら因子のミトコンドリア局在を明確に示す実験結果は、なかなか得られなかった。そこで、これらの遺伝子を含むゲノミッククローンを用いてGFP融合遺伝子を作成し、シロイヌナズナ形質転換体を作出した。その結果、AHG2,AGS1双方とも、根の伸長領域に於いて強いGFP蛍光が観測され、それらの多くはミトコンドリアに局在することが確認された。また、ミトコンドリア移行シグナルを含むと思われるN末を欠失したこれら因子では、ミトコンドリアmRNAのpolyA付加への影響が認められなくなり、機能的にもミトコンドリア局在が強く示唆された。 2)これら因子の機能解析 これらの因子活性を明らかにするために、もともとミトコンドリアmRNAのpolyA付加が確認されていない出芽酵母でこれら因子を発現させ、ミトコンドリアmRNAのpolyA状況を調査した。まず、これらの因子双方とも出芽酵母内ではミトコンドリアに局在することを、GFP結合タンパク質を用いて確認した。AGS1を出芽酵母で発現させるとCOX3mRNAにpolyAが付加されることが認められた。これに対し、N末欠失または変異型AGS1では、その活性は認められなかった。このことからAGS1は単独でミトコンドリア内でmRNAにpolyAを付加する活性があることが実証された。一方AHG2のpolyA除去活性はまだ認められていないが、確実にミトコンドリア局在を誘導させ、実験を試みる予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア局在に予想以上に時間がかかったが、この問題は研究成果の本質に関わる問題であり、明確な結果が必要であるので、やむを得ないと考える。その一方で、出芽酵母での機能再構築実験はAGS1のみではあるが、予想以上に明確な結果が得られ、実験系の早期確立が望めるので、全体の研究の進展具合はほぼ予定通りと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ミトコンドリア局在について生化学的解析(抗体を用いた解析)、変異株のミトコンドリアの生化学的解析、AHG2の出芽酵母での機能発現、出芽酵母を用いてのAGS1,AHG2のバランス制御解析を行う。これら因子の抗体は既に作成済みであり、ミトコンドリア精製実験方法も確立できているので、これらの実験の遂行には大きな問題はなく、次年度中には成果を論文として公表できると考える。
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