高等生物のDNAは、タンパク質として翻訳される部分(エキソン)だけでなく翻訳されない部分(イントロン)を含んでいる。イントロンはRNA転写後に取り除かれ、その反応はスプライシングと呼ばれている。その取り除きに関しては厳密な正確さが要求され、取り除く部位が一塩基でもずれると、病気・疾患の原因となる。そのため、その機構の解明は、人を含む高等生物の基本的な生命現象を理解する上で非常に重要であるだけでなく、スプライシング異常による疾患である地中海性貧血や筋ジストロフィー、メンケス病に対する治療薬開発の足がかりになると期待される。この役割を担うのがスプライソソーム複合体であるが、中でも、イントロンの認識に重要な役割を果たすのが、SF1/BBP及びU2AFタンパク質である。このSF1/BBPとU2AFがどのようにイントロンを認識しているのか、また他のタンパク質と共同してどのようにイントロンの取り除きを制御しているのかを、その立体構造から明らかにしようというのが本研究の目的である。本研究では、SF1/BBPとU2AFを複合体として調製することに成功したが、その複合体は非常に不安定で凝集しやすく、種々の測定に用いるのが困難なことを確認した。そこでまず、イントロン認識に特に重要なU2AF小サブユニットの立体構造解析を行ない、イントロン認識に重要な部位の特定を行なうことにした。その結果、U2AF小サブユニットの結晶構造解析に成功した。現在は、U2AFがどの部位でRNAを認識・結合しているのかをNMR法により知ることを目指し、理化学研究所の武藤博士と共同研究を進めている。
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