分割GFPを応用しシナプス結合をGFP蛍光で検出する技術“GFP Reconstitution Across Synaptic Partners(GRASP)”は時間分解能と可逆性に問題がありリアルタイムにシナプスの結合解離を観察するには不向きであった。これらの問題点は分割GFPに起因する。そこで申請者はGRASPにおけるGFPを化学発光タンパク質であるウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla Luciferase; RLuc)に置き換える事でリアルタイムに可視化するプローブを作成するために明るい発光タンパク質の開発を進めてきた。RLucはGFPと異なり再構築に要する時間が短く分割・再構築が可逆的である事がわかっている。しかしながらRLucの発光量子収率は約0.05と非常に低く単純にGFPをRLucに置き換えるだけでは細胞・個体のイメージングは難しいと考えられた。そこで申請者は生物発光エネルギー移動(Bioluminescence resonance energy transfer; BRET)を利用しRLucの発光量子収率の増強を組み合わせる事を試みた。RLucをBRETのドナー、蛍光タンパク質VenusをBRETのアクセプターとして両者のリンカー配列や配向を変える事を試みた。また、RLuc自体を明るくする変異をスクリーニングによって発見した。これらの結果を組み合わせることで、元のRLucに対して10倍以上明るく発光するタンパク質を開発することに成功した。この新規開発発光タンパク質を用いる事で、単一細胞レベルでミトコンドリア、微小管、アクチン、細胞核等の細胞小器官をイメージングすることが可能となった。
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