研究実績の概要 |
シナプス結合を可視化するための技術としてGFP Reconstruction Across Synaptic Partners (GRASP)が開発されたが、GRASPは時間分解能と可逆性に問題がありリアルタイムにシナプスの結合解離を観察するには不向きであった。これらの問題点を解決するために我々はGRASPにおけるGFPを化学発光タンパク質であるウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla Luciferase; RLuc)に置き換える事を着想した。RLucはGFPと異なり再構築に要する時間が短く分割・再構築が可逆的である事がわかっている。しかしながらRLucの発光量子収率は約0.05と非常に低く単純にGFPをRLucに置き換えるだけでは細胞・個体のイメージングは難しいと考えられた。そこで我々は生物発光エネルギー移動(Bioluminescence resonance energy transfer; BRET)を利用しRLucの発光量子収率の増強を組み合わせる事をまず試みた。BRETは励起状態にある発光タンパク質-基質複合体(ドナー)から蛍光分子(アクセプター)に無放射的にエネルギーが移動しアクセプターが蛍光を発する現象である。この結果RLucの10倍以上明るい化学発光タンパク質Nano-lanternを開発することに成功した。Nano-lanternのRLucドメイン内の特定の位置にカルシウムイオン, cAMP, ATP感受性タンパク質を挿入する事でカルシウムイオン, cAMP, ATPそれぞれに対する機能性指示薬を開発した(Saito et al, Nat. Commun., 2012)。次に我々はこれら指示薬作成に使ったRLucドメイン内の挿入位置でNano-lanternを分割し上記のGRASP技術への適用を進めている。
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