公募研究
免疫系細胞は全身を循環しながら感染部位や病変組織へと素早く移行する必要性から、活発に移動すること自体が重要な機能のひとつであるといえる。本研究では二光子励起レーザー顕微鏡を用いた組織内生体イメージングにより、リンパ節間質を高速移動するT細胞の動態観察および隣接する組織細胞の同時可視化を試み、3次元的組織微小環境内における遊走機構の解明を目指した。二光子励起レーザー顕微鏡を用いたマウスのリンパ節イメージングの方法として、個体を用いたIntravital法やリンパ節Explant法に加え、組織Slice法を用いたT細胞遊走観察系を確立した。特に組織Slice法は抗体や薬剤を用いた阻害実験が容易で、遊走メカニズムの詳細な検討に非常に有効である。T細胞はリンパ節組織中で概ね10μm/min以上の速度で活発に移動した。また、CAG-ECFPマウス、CD11c-Venusマウスやそれらの骨髄キメラマウスを用いて、ストローマ細胞および樹状細胞のネットワーク構造を可視化し、遊走中のT細胞との関係を詳細に観察したところ、T細胞は両ネットワーク細胞に頻繁に接触しながら組織中を移動した。インテグリンLFA-1およびそのリガンドであるICAM-1の阻害はT細胞遊走を部分的に抑制し、野生型およびICAM-1欠損マウス骨髄キメラ由来のリンパ節を用いた解析から、樹状細胞が発現するICAM-1がLFA-1依存的な高速遊走に必要であることが明らかになった。また、ストローマ細胞が産生するAutotaxinとそれにより産生されるリゾフォスファチジン酸(LPA)がT細胞遊走に部分的に関与していることが示唆され、LFA-1非依存的な遊走活性に寄与していると推測される。以上のことから、リンパ節内のT細胞高速遊走は複数の組織細胞に支持された、いくつかの分子機構の協調作用により制御されていると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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