公募研究
下垂体後葉ホルモン(バゾプレッシンおよびオキシトシン)は視床下部に局在する神経分泌ニューロンの細胞体で産生され、下垂体後葉に投射した軸索終末から血中に分泌される。バゾプレッシンは腎臓に作用して抗利尿ホルモンとして、オキシトシンは子宮筋や乳腺に作用して分娩や射乳を引き起こす。一方、脳内にも下垂体後葉ホルモンの受容体が広範に存在し、種々の高次脳機能に関与することが明らかになりつつある。本研究課題では、下垂体後葉ホルモンを産生する神経分泌ニューロンとその神経活動をc-fos遺伝子発現を指標として蛍光タンパクによって可視化すること、さらには光感受性タンパク(チャネルロドプシン2(光興奮タンパク)およびハロロドプシン(光抑制タンパク))を導入したトランスジェニックラットを作出することにより神経活動を光照射により操作する方法を確立することを目的とした。本年度は、本学動物研究センターにて系代繁殖中のオキシトシンーmRFP1(赤色蛍光タンパク)トランスジェニックラットと新たに作出したc-fos-eGFP(緑色蛍光タンパク)トランスジェニックラットを交配し、ダブルトランスジェニックラットを作出した。このラットにCCK-8を腹腔内投与するとオキシトシン産生ニューロン(赤色蛍光(mRFP1)を示す)の神経核に緑色蛍光(eGFP)が発現するのを観察できた。さらに、バゾプレッシン遺伝子にチャネルロドプシン2-ハロロドプシン遺伝子を導入したバゾプレッシン-チャネルロドプシン2-ハロロドプシントランスジェニックラットを作出した。今後、パッチクランプ法等を駆使して光照射によって下垂体後葉ホルモン産生ニューロンの興奮性を光照射によって操作できるかどうかを検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
神経活動の指標としてc-fos遺伝子発現を蛍光タンパクにより可視化するためのトランスジェニックラットおよび下垂体後葉ホルモンを可視化したトランスジェニックラットとの交配によるダブルトランスジェニックラットの作出が実施できた。バゾプレッシン産生ニューロンに光感受性タンパク遺伝子を導入したトランスジェニックラットの作出が終了したところであり、今後、光照射の効果についてパッチクランプ法等によって検討する予定である。
バゾプレッシンおよびオキシトシンを産生する神経分泌ニューロンの神経活動の可視化にc-fos遺伝子発現の蛍光タンパクによる可視化が有用であることの評価を種々の生理的刺激によって検証する。さらに、光感受性タンパク遺伝子を導入したトランスジェニックラットのバゾプレッシン産生ニューロンの神経活動を光照射によって操作する方法を確立する。また、オキシトシン産生ニューロンにも光感受性タンパク遺伝子を導入したトランスジェニックラットの作出を試みる。
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