本研究では、チャネルの開閉機構を明らかにするため、蛍光色素の特性を利用してイオンチャネルの構造変化を可視化し、チャネル開閉に伴う構造変化と機能変化を同時に計測することを目的としている。本年度は、カリウムチャネルの一つであるKcsAチャネルの細胞内ドメインの構造変化を、1分子、実時間でチャネル活性計測と同時に測定することを目標とした。KcsAチャネルの細胞内ドメインの構造変化は、標識した蛍光色素の蛍光強度の変化で捉えることができることは、以前巨視的な系で確認済みであった。しかしながら、1分子レベルでの確認は行っていなかった。そのため、同時計測を行う前に、まず、1分子レベルでの構造変化を蛍光色素を用いて調べた。蛍光標識したKcsAチャネルをリポソームに組み込み、そのリポソームをアビジン-ビオチン系を介してカバーガラスに固定した。その後、全反射顕微鏡を用いて、1分子レベルで蛍光色素を蛍光の輝点として捉え、KcsAチャネルの活性化条件下と不活性化条件下で、その蛍光強度変化を測定した。その結果、pH4では安定した蛍光強度を示す一方、pH7では明滅を繰り返している輝点が観察された。これより、KcsAは、活性化条件下では安定した構造状態をとっている一方、不活性化条件下では頻繁に構造状態が変化していることが示唆された。しかしながら、そのような傾向を示さない輝点も存在し、正確にデータが取れているとは言い難い。
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