イオンチャネルの機能は、イオンの流れを電流として捉えることで、1分子レベルで詳細に測定できる。しかしながら、チャネルの構造に関する情報は構造解析などからの特定の状態でのスナップショットしかなく、機能しているチャネルの構造の遷移は未だ明らかではない。本研究では、チャネルの分子実体を理解するために、以前我々が開発した構造・機能同時計測装置を用いて、機能しているチャネルの構造状態を1分子レベルで計測し、その構造機能相関を明らかにすることを目的とし、以下の4つを行った。 1.蛍光色素を用いたKcsAチャネルの構造変化の検出. 以前多分子系でKcsAチャネルの開・閉状態を蛍光色素、テトラメチルローダミン(TMR)を用いて捉えることに成功した。今回、不活性化条件でも活性を示す開状態模倣変異体、E146Q、の構造状態を同様に調べた結果、E146Qの構造状態は野生型の開状態と異なるものであったことから、KcsAには中間状態が存在することが示唆された。 2.KcsAチャネルの1分子レベルでの構造変化の可視化. 以前多分子系でTMRを用いてKcsAチャネルの開閉を明らかにした標識部位で、今回1分子レベルでも固体支持膜に再構成したKcsAの開閉を蛍光のオン・オフとして明確に捉えることができた。 3. 同時計測系の改良. 最近、構造・機能同時計測装置に、新たなチャネル再構成法を組み込み、改良した。本研究では、事前にチャネルの疎水部を保護剤で保護することで、さらにチャネルの膜への組み込み効率を上げることに成功した。 4. 1分子、実時間でのKcsAチャネルの構造変化と機能変化の同時計測. 3.で改良した同時計測装置を用い、膜に再構成されたTMR標識KcsAチャネルの電気的・光学的計測を行った。その結果、チャネル活性が見られ、TMRの蛍光を輝点として捉えることができた。
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