T細胞が抗原提示細胞と接着し情報の受け渡しを行う際、二つの細胞の接着面には、T細胞受容体(TCR)を核とするシグナル伝達分子の集合体TCRマイクロクラスターが形成される。TCRマイクロクラスターはT細胞活性化の最小ユニットとして働くが、抑制シグナルのドメインとしても機能することが分かってきた。本課題研究では、E3ユビキチンリガーゼc-ClbおよびCbl-bが形成する新規抑制性マイクロクラスターをイメージングし、TCRのインターナリゼーションやその下流のシグナル伝達分子の分解を介したTCRシグナルの終焉のメカニズム明らかにした。 c-CblおよびCbl-b欠損マウスを用い、TCR およびその下流のシグナル伝達分子のイメージング解析を行った。末梢のT細胞においては、Cbl-b欠損により、TCRマイクロクラスターの中心部への移動が遅延、TCR/CD3複合体のインターナリゼーションが障害をうけ、TCR/CD3は巨大な中心部超分子活性凝集(c-SMAC)となった。Cblの基質となりうるTCR下流のシグナル伝達分子の多くもTCRマイクロクラスターに凝集し、Cbl-b欠損による巨大なc-SMACへのリクルート、それによりT細胞活性化の遷延が引き起こされた。Cblのアダプター分子CIN85は、CIN85コンディショナル遺伝子欠損マウスから、単独での作用はなかった。TCRのインターナリゼーションに関与するダイナミンとクラスリンを解析した。ダイナミンはTCRマイクロクラスターとc-SMACの両方に、クラスリンはc-SMACに凝集することが分かった。Cblを介するTCRシグナルの抑制は、マイクロクラスターと-SMACの両方において、時間的空間的に行われていると考えられた。
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