研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
23113522
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
実吉 岳郎 独立行政法人理化学研究所, 記憶メカニズム研究チーム, 研究員 (00556201)
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キーワード | 光活性化タンパク質 / シナプス可塑性 / 海馬 / アクチン |
研究概要 |
平成23年度は、Racを介するシナプス構造可塑性制御の解析として、Arp2/3阻害剤CK666およびPAK阻害剤IPA3の効果を検討した。CK666は効果が見られなかったもののIPA3ではPA-Racによるスパイン肥大を有意に抑制した。したがって、Racによるスパイン肥大化は少なくとも下流キナーゼであるPAKを介していることが分かった。また、Racによるアクチン重合を蛍光寿命測定顕微鏡によるFRET測定(FLIM-FRET)によって解析した。PA-Racによるスパイン肥大化は2光子グルタミン酸ケージ解除による長期増強発現に伴うスパイン肥大化と同様にアクチン重合を伴うことが分かった。したがって、PA-Racはグルタミン酸受容体からのシグナル伝達をバイパスしてスパイン肥大化をもたらすものと考えられる。PA-Racと同様に申請者が開発したPA-CaMKIIの性質を詳細に検討している。2光顕微鏡によるPA-CaMKIIの活性化によってスパインの肥大化が確認できた。また、PA-CaMKIIはCaMKII分子と複合体を形成すること、キナーゼ活性が肥大化に重要であることを明らかにできた。しかし、スパイン内で活性化状態がどのくらい持続するかなど未検討な情報はまだ多いため、今後検討する予定である。2光子顕微鏡を用いたFLIM-FRET法によるdual-FRET測定のためのPakバイオプローブをに光子顕微鏡用に変更したが、グルタミン酸刺激に応答しないなど、プローブそのものの検討が必要であった。また、dual-FRET用の新しい蛍光タンパク質は学術班内共同研究として理化学研究所宮脇博士と共同で開発中である。また、光によるタンパク質相互作用制御は、研究予定ではFKK1-GIGANTEAを利用することになっていたが、時間解像度が悪いため、CRY2-CIB相互作用システムを利用することにし、発現プラスミドの構築まで完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は来年度に本格的に解析するためのツール作成としての位置づけであるため、研究計画通りたいていツールが整った。一方、FLIM-FRET用バイオプローブ開発には時間がかかるため多少遅れがあるが、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね研究計画通り進展しているため、来年度も研究計画に従った方向性で研究を遂行したい。
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