骨は支持組織あるいは運動器であるのみならず、神経系や内分泌系、免疫系と協調しながら骨以外の組織や臓器の恒常性維持を調節する重要な器官であることが明らかになりつつある。したがって、骨を新たな枠組みで統合的に理解することが医学生物学的に重要な課題となる。そのための方法論として、本研究では、最新の細胞機能イメージング技術を駆使して、骨組織の機能発現レベルを時空間的に可視化・定量化し、網羅的にマッピング表示することで、骨機能の新規解析プロセスを提示することを目的とした。 本研究成果の第一として、骨細胞ネットワークの3次元画像取得と計測法を確立したことがあげられる。骨細胞は、骨基質中に存在し細胞突起を介してたがいに結合し、その細胞突起は骨表面の骨芽細胞や破骨細胞とも連絡をしている。骨細胞は荷重応答センサーとして働き骨代謝を調節しているとされる。また、そのネットワーク構造には荷重センサーとして重要であると考えられている。本研究では、非荷重骨である頭頂骨と荷重骨である脛骨の骨細胞ネットワークを3次元蛍光イメージング法により計測比較した。その結果、脛骨の骨細胞ネットワークは細くてより網羅的であり、センサーとしてより感度が高い構造であることが伺えた。 さらに、骨細胞から発現分泌されるWntシグナルの抑制分子であるスクレロスチンの発現分布動態の変化を3次元蛍光イメージング法により計測することに成功した。また、共焦点蛍光画像を数百枚タイリングすることで、骨組織のほぼ全体でのスクレロスチンの発現分布を網羅的にかつ高解像度に観察することに成功した。この結果、スクレロスチンは主に骨幹部の骨細胞で産生され、その発現は生後次第に発現分布量領域を拡大することが明らかとなった。 これらの知見は、骨細胞のネットワーク形態や機能は、時間的空間的にヘテロジェニティを有することを示していた。
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