研究概要 |
神経系に強く発現するAlcadeinは、Alcα、Alcβ、AlcγからなるI型膜タンパク質ファミリーである。Alcの細胞質ドメインは、キネシン-1モーターの軽鎖(KLC)に結合する短いペプチドWDモチーフを含み、軸索内の順行輸送を受ける。一方、アルツハイマー病原因物質Aβの前駆体APPは、JIP1bを介してKLCに結合し、同様な順行輸送を受ける。APPとAlcの均衡の取れた輸送が両タンパク質の代謝安定化に必要であり、輸送バランスの喪失は、神経変性疾患を引き起こすと考えられている。両タンパク質の輸送・代謝制御機構の解明は、神経機能と神経変性疾患の発症機構を明らかにする上で重要である。APPとAlcadeinはそれぞれ別の膜小胞としてbuddingしキネシン-1による順行輸送を受ける。APPが比較的安定的に順行輸送を受けるのに対し、Alcは輸送途中でセクレターゼによる切断を受けやすい事が明らかになった。Alcが過剰な状態ではAPP小胞の順行輸送が阻害され、アミロイド生成的な代謝が増加した。今年度、Alcadeinがどのようにキネシン-1モーターを活性化しているのか、分子機構の解明に取り組んだ。その結果、Alcadein細胞質ドメインの極めて短い配列がキネシン-1モーターを活性化出来ることを実証し、論文として発表した(Kawano, T.,(4名略) and Suzuki, T.(2012) A small peptide sequence is sufficient for initiating kinesin-1 activation through part of TPR region of KLC1. Traffic in press.)。また、異分野共同研究として、輸送小胞の自動追跡・解析法の開発を九大の内田教授と取り組み、その成果をICPR2012(International Conference on Pattern Recognition)で内田教授が発表する予定である。
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