研究実績の概要 |
我々は血小板における開口放出に低分子量GTP結合蛋白質Ralとそのエフェクターであるexocyst複合体およびRab27とそのエフェクターであるMunc13-4が深く関わっている。Ralの抑制性制御因子Ral GTPase活性化因子(RalGAP)は長らく未知であったが、最近我々はRalGAPを同定し世界に先駆けて報告した (JBC, 2009)。本研究ではRal・RalGAPの制御する開口放出、エンドサイトーシス制御の研究を発展させるとともに、KOマウスを最大限に利用して生理的および病態におけるRal・RalGAPが制御する細胞内ロジスティクの役割を個体レベルで解明し、されに、Rab27とMunc13-4の制御機構やRal-exocyst複合体系との関わりも解明する事を目指した。昨年度はT Martin博士(Wisconsin大学)との共同研究で、Ca2+/リン脂質結合ドメインであるC2ドメインをN末端とC末端に持つMunc13-4の両方のC2ドメインが血小板等の顆粒放出に重要であること、さらに両方のC2ドメインにはカルシウムイオンが実際に結合し、SNARE分子を含有するliposomeを用いた解析によってMunc13-4はCa2+依存的にSNARE複合体形成を制御する開口放出のCa2+センサーとして機能することを明らかにし、Munc13-4が放出のカルシウムセンサーとして機能することを明らかにした。さらに、Munc13-4が原因である遺伝病の迅速診断法を開発した。本年度は、血栓形成に重要な働きをする内皮細胞のWP体放出が、Rab27およびRab3dとともに、Rab15に依っても制御されること、Rab15もMunc13-4をエフェクターして、WP体放出を制御することを見いだした。また、RalGAPが膀胱癌の浸潤や転移に関連していることを報告した。
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