研究領域 | 細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究 |
研究課題/領域番号 |
23113704
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 康太 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (60549632)
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キーワード | VII型コラーゲン / 表皮水疱症 / 小胞体 / 線維化 |
研究概要 |
コラーゲン分子にはさまざまなアイソフォームが存在し、それぞれ骨、軟骨、あるいは真皮などの形成に重要な役割を担っていることが知られている。代表的なコラーゲン分子であるI型コラーゲンは、骨基質の大部分を占めるタンパク質成分である一方、VII型コラーゲンは皮膚ケラチノサイトなどに豊富に存在し、表皮と真皮をアンカーする役割を担っている。コラーゲン分子の変異による疾患はいくつか知られているが、その発現部位に応じて病態は様々であり、VII型コラーゲンの点変異は表皮水疱症を呈する。 一方でコラーゲン分子の分泌は、その構成する複合体が巨大であることから特殊な経路によって運ばれると考えられている。研究代表者は先に、VII型コラーゲンの分泌に特異的に必要な小胞体膜蛋白質としてTANGO1を見出し、さらにこれがcTAGE5と複合体を形成して機能することを明らかにした。 本研究は、コラーゲンの分泌機構を解析することで、コラーゲン関連疾患、特に表皮水疱症及び肝臓の線維化の病理病態を理解することを目的とした。 本年度は、まずcTAGE5/TANGO1複合体に結合する因子として小胞体シャペロンであるBiP(Grp78)を見出した。BiPは小胞体内腔に存在するシャペロンであり、cTAGE5/TANGO1複合体によるVII型コラーゲンの認識にBipが関与する可能性が考えられた。VII型コラーゲン認識機構を明らかにすることにより、小胞体に蓄積型の変異をもつ表皮水疱症の病理の理解に繋がる可能性が示された。 さらに肝臓などの限局した臓器において発現するcTAGE5の伸長したスプライシングバリアントcTAGE5Lは、肝障害を模倣した刺激により発現上昇し、肝臓における線維化に寄与することが考えられる。本年度は、cTAGE5Lの性状を解析した結果、cTAGE5LはcTAGE5,TANGO1と同様に巨大複合体を形成していることが示唆された。今後、cTAGE5L複合体の性状を解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、コラーゲンの分泌機構を解析することによりコラーゲン関連疾患である表皮水疱症及び線維化の病理病態を理解することを目的とした。本年度は、新たに小胞体シャペロンがコラーゲンの輸送に関与する可能性を見出しており、コラーゲン点変異により小胞体に蓄積し発症する表皮水疱症に対して、正しく折りたたまれないためである可能性を提示できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、小胞体シャペロンがコラーゲンの分泌過程に積極的に関与する可能性を見出した。今後は、cTAGE5Lに結合する蛋白質の同定より、cTAGE5Lが担う分泌過程を明らかにし、cTAGE5Lが関与すると考えられる肝線維化について新たな知見を提示していきたい。
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