研究領域 | 細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究 |
研究課題/領域番号 |
23113715
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
天野 敦雄 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50193024)
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キーワード | 歯学 / 細菌感染 / 細胞・組織 / メンブレントラフィック / オートファジー / SNARE |
研究概要 |
Group A Streptococcus(以下GAS)は咽頭・扁桃炎などの軽度の疾患から壊死性筋膜炎などの重篤な感染症の原因菌であり、細胞内分解機構であるオートファジーによって分解殺菌される代表的な菌でもある。細胞質内へと侵入したGASはオートファゴソームにより捕獲され、その後オートファゴソームとライソソームとの融合により分解・殺菌される。 我々はGASを内包したオートファゴソームであるGcAV(GAS containing Autophagosome like Vacuole)の形成がSyntaxin 17のノックダウンにより著しく阻害されることを見出した。電子顕微鏡での詳細な観察の結果、Syntaxin 17ノックダウン細胞ではGcAV形成は初期段階で阻害されおり、またGASの細胞内生存率がコントロール細胞と比較して顕著に上昇していることから、Syntaxin 17はGcAV形成の必須因子であることが明らかとなった。Syntaxin 17は細胞内小胞輸送に関与するとされているSNAREタンパク質群に属し、小胞体への局在が明らかにされてはいるが、その機能は殆んど解明されていない。Syntaxin 17同様に小胞体への局在が明らかにされているSNAREタンパク質群のうち、Syntaxin 18、Sec20、Sec22a、Sec22c、Slt1をそれぞれノックダウンした細胞におけるGASの生存率にはコントロール細胞と比較して顕著な差が認められなかったことからもSyntaxin17とオートファジーとの特異的な関係性が示唆された。以上の結果は、機能未知のタンパク質であったSyntaxin17が、細胞の対細菌感染機構として重要な機能を保持していることを示す重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞内侵入細菌の転機を決定づけるオートファジー機構の分子基盤について詳細な解析を実施し、その成果をNature誌に投稿し、現在Revisionを再投稿したところで有り、acceptが強く期待される状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はSyntaxin 17の機能解析を進めると共に、GASだけではなくP.gingivalis(歯周病菌)とオートファジーとの関連性について調べる予定である。P.gingivalisがどのようにオーマトファジーによって認識されているのか、つまり細胞内に侵入したP.gingivalisを初期段階で認識する細胞側因子に着目して今後の研究を展開していく予定である。
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