研究領域 | 細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究 |
研究課題/領域番号 |
23113719
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 泰憲 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30467659)
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キーワード | 神経伝達物質 / シナプス小胞 / SNARE / 小胞体 / トモシン |
研究概要 |
神経伝達物質の過剰放出や不足は、てんかん、統合失調症、鬱等の様々な神経疾患を引き起こす。神経伝達物質の放出量は、シナプス小胞が連続した素過程(融合小胞の選別、ターゲッテイング、ドッキング、プライミング、膜融合)を経て、シナプス前膜に超高速で融合することで厳密に管理されている。本研究では、素過程とその順序を構成、制御する分子基盤の解明を行う。得られた知見に基づき、超高速膜融合に至る全過程を世界に先駆けて試験管内で再構成する。これにより長年不明であった素過程と超高速膜融合に至る膜構造変化との機能関係を明らかにすることを目的とする。 本年度は膜融合を制御するSNAREタンパク質、ターゲッテイングを制御するRab3、ドッキングを制御するトモシンに着目し、以下の結果を得た。 1)SNAREタンパク質の生合成を制御する新規小胞体膜タンパク質p38を同定し、性状解析を行った。その結果、p38が小胞体膜上で全く新しい膜挿入装置を構成すること、この装置がASNAl ATPaseと結合してSNAREタンパク質の小胞体への膜挿入を調節していることを明らかにした(Yamamoto et al.論文投稿中)。 2)Rab3 GTPase活性促進タンパク質(Rab3GAP)に結合する分子として筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子の1つを同定した。この分子は小胞体膜上でRab3GAPと複合体を形成することを明らかにした。 3)トモシンとシナプス小胞上のカルシウムセンサータンパク質シナプトタグミンの結合が、融合する小胞数の決定するメカニズムを明らかにするため、トモシンとシナプトタグミンの結合部位を決定した。得られた知見に基づき、シナプトタグミン結合能を欠失したトモシンの変異体を作製した。 このように本年度は、神経伝達物質放出の素過程の調節機構について当初の計画以上の成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
世界に先駆けてp38膜挿入装置の発見、同定に成功した。この解析を推し進めることにより、これまで全く不明であったSNAREタンパク質の分子数制御のメカニズムを解明できる可能性が高いと考えている。さらにRab3GAPに結合する分子として筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子の1つを同定した。この結合は全く予想外のものであり、解析を推し進めることで神経伝達制御の新しい概念の創出に繋がると考えている。このように本研究は、当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1)p38膜挿入装置によるSNAREタンパク質の生合成制御と神経伝達との機能関係を明らかにし、この過程の試験管内再構成を行う。これにより超高速膜融合に必要なSNAREタンパク質の分子数制御のメカニズムを解明する。2)Rab3GAPと筋萎縮性側索硬化症の機能関係を明らかにする。超高速膜融合に必要なターゲッテイングの実態、その破綻と疾患の関係を解明する。3)シナプトタグミン結合能を欠失したトモシンの変異体を用いて、融合小胞数の制御過程の電気生理学的解析および試験管内再構成を行う。これにより超高速膜融合に必要な融合小胞数制御のメカニズムを明らかにする。4)得られた知見を総合して、超高速膜融合に至る全過程を世界に先駆けて試験管内で再構成し、長年不明であった素過程と超高速膜融合に至る膜構造変化との機能関係を明らかにする。
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