研究概要 |
初期エンドソームからの選別輸送は様々なシグナル伝達の調節を行っていると考えられるが、その分子メカニズムは多くの謎が残っている。なかでも輸送の最終段階である膜の変形、切断については関与する分子も含めてほとんどわかっていない。本研究は初期エンドソームからの選別輸送に着目し、その分子メカニズム解明を通して細胞レベルでのシグナル伝達機構の調節機構に迫ろうとするものである。 我々は、細胞内輸送に必須のタンパク質として知られているダイナミンについて、新たな役割を発見・報告したが(Ishida et al., Cell Struct. Funct. 2011, Henmi et al., PLoS ONE 2011, Takei and Tanabe Peripheral Neuropathy 2012)、その一方でダイナミンが初期エンドソームからの輸送にも必須であることを見出した(Mesaki et al., PLoS ONE 2011)。本報告では、選別輸送の完了がエンドソームの移動能や酸性化のトリガーになっていることを見出し、そのカスケード機構を提唱した。 さらに、細胞骨格アクチンとその制御因子であるコルタクチンも初期エンドソームで働いていることを見出し(Ohashi et al., PLoS ONE 2011, Tanabe et al., Commun. Integr. Biol. 2011)、長い間謎に包まれていた選別輸送機構のメカニズムが明らかになってきた。 以上の報告では膜変形に関わるダイナミンや切断の張力となるアクチン・コルタクチンを同定し、報告してきた。我々は更なる阻害剤スクリーニングによって、脂質リン酸化酵素の同定を行い、初期エンドソームに特異的に局在するリン脂質を世界で初めて見出した。更に、そのリン脂質に結合し、細胞内輸送に必須と考えられるタンパク質も同定し、その制御メカニズム解明が進んでいる(論文投稿中)。
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