顕微鏡技術の進展に伴い、生きた細胞の内部を観察できるようになってきた。これにより、病気になる原因を細胞レベルで探ることが期待されている。しかし、細胞内画像を基に病気の原因を探るためには、細胞内画像から特定の粒子の計数や追跡等が必要になる。これまでは人によりその処理がなされてきたが、主観的なデータになってしまったり、大量のデータを得られない等の問題があった。そこで、ここでは細胞内画像から自動的に特定の粒子を検出、計数、追跡する方法について研究を行った。 主な成果としては、細胞内画像から機械学習法を用いて脂肪滴を検出し、さらに脂肪滴と背景との境目となる周辺エッジ情報から脂肪滴の大きさを推定した。これにより、様々な大きさの脂肪滴を精度良く計数できるようにになった。専門家により付けられた正解と照らし合わせて96%の精度が得られた。この方法では、教師有学習法が利用されたが、一般に教師有学習には多くの教師付きデータが必要となる。そこで、そうした情報に依存しない輝点検出法についても研究を行った。教師付きの方法に比べると精度は劣るものの、与えられた1枚だけから背景を推定し、それを基に背景と輝点の違いを強調するために、事前の情報を必要としない実用的な方法である。 また、メラノソーム追跡では、サポートベクター回帰を用いて対象の動き方を学習した。回帰による予測は完璧ではないので、予測した位置の周辺で探索して補正した。これにより、従来法に比べて大きく精度が向上した。これらの結果を国内外の会議および論文誌で発表した。
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