研究領域 | 細胞内ロジスティクス:病態の理解に向けた細胞内物流システムの融合研究 |
研究課題/領域番号 |
23113728
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
大森 義裕 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 発生生物学部門, 研究副部長 (90469651)
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キーワード | 視細胞 / 繊毛 / IFT / 網膜 / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
本年度は、Makがオプシンの輸送機構に関与する可能性を調べる目的でオプシンの繊毛内輸送に関与すると予想される分子であるキネシンモータータンパク質Kif3aと微小管結合タンパク質RP1について、Makがこれらのタンパク質をリン酸化するか否か解析を行った。精製したMakをKif3aとRP1を基質として、in vitroキナーゼアッセイを行ったところ、これらのタンパク質をMakがリン酸化することが明らかとなった。また、その配列を解析し、Makがリン酸化する候補アミノ酸を見出した。これらのアミノ酸に変異を導入したコンストラクトを作製し、キナーゼアッセイを行ったところ、変異を導入したコンストラクトでは、リン酸化が見られなかったことから、Makがこれらのアミノ酸をリン酸化することがわかった。また、ゼブラフィッシュを用いた機能解析では、Kif3bがオプシンの輸送に重要であることを見出した。また、Kif3cはコーンオプシンの輸送に機能していることが明らかとなった。また、新たに見出したゼブラフィッシュIFT-A変異体の解析を行った。この変異体では、網膜だけでなく、内耳有毛細胞、鼻腔上皮細胞、腎臓上皮細胞などの繊毛にも異常をきたすことがわかった。この変異体では、順行性IFTよりも、ゆっくりした速さで、視細胞の脱落が進行することが明らかとなった。順行性IFTだけでなく、逆行性IFTもオプシンの輸送に必須の役割を果たしていることがわかりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繊毛キナーゼMakの機能解析については、MakがRP1をリン酸化するアミノ酸の同定に成功した。また、新たなターゲットとしてKif3aをMakがリン酸化することを見出している。更に、Makと相互作用する分子の同定を進めている。新規なゼブラフィッシュ変異体の機能解析も同時に進めている。逆行性輸送のIFTに異常をきたす変異体の解析から、逆行性輸送がオプシンの輸送に関与する分子メカニズムの解明を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、繊毛キナーゼMakと相互作用する分子の同定やリン酸化ターゲットの同定、更に、繊毛の長さ制御とオプシンの輸送機構の関係を見出すことにより、Makが網膜視細胞変性を引き起こす分子メカニズムの全体像を明らかにしていく。更に、新たに同定したゼブラフィッシュ変異体を用いて、逆行性輸送IFTとセントロソームタンパク質がオプシンの輸送に関与する分子メカニズムを免疫染色法、プロテオミクス解析などの手法を用いて解析を行っていく。
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